熟字訓(じゅくじくん)と当て字(あてじ)とは?
漢字には、学校で習う読み方のほかに、少し特別な読み方をすることがあります。 その代表が「熟字訓(じゅくじくん)」と「当て字(あてじ)」です。
熟字訓は、複数の漢字を組み合わせた熟語に、漢字の本来の読みとは違う「特別な読み」をあてはめたものです。 一方、当て字は、意味や音を借りて表記した漢字で、必ずしも漢字の本来の読みや意味とは一致しません。 どちらも日本語の歴史の中で生まれた読み方で、日本人のことばの感覚がよく表れています。
熟字訓とは?
熟字訓とは、複数の漢字を組み合わせた熟語に、漢字の読みとは関係のない特別な読みをあてたものです。 漢字一つひとつの読みをつなげても読めないため、初めて見ると「どうしてこう読むの?」と不思議に感じるかもしれません。
たとえば「今日(きょう)」。 「今(いま)」と「日(ひ)」の読みを合わせても「きょう」にはなりませんよね。 これは熟字訓の代表例で、昔から日本語として使われてきた読み方が、そのまま漢字にあてられたものです。
よく使われる熟字訓の例
- 今日(きょう)
- 明日(あした)
- 大人(おとな)
- 七夕(たなばた)
- 氷柱(つらら)
- 土産(みやげ)
これらはすべて、漢字の読みをそのまま当てはめても読めません。 日本語としての言葉が先にあり、あとから漢字があてられたため、このような読み方になりました。
熟字訓が生まれた理由
熟字訓は、日本語の言葉を漢字で表すために生まれました。 もともと日本語には、古くから使われてきた固有の言葉がたくさんあります。 それらを漢字で書こうとしたとき、漢字の読みをそのまま使うのではなく、日本語の読みを優先して漢字をあてたのです。
たとえば「おとな」という言葉は、日本語として古くから使われていました。 それを漢字で表すとき、「大きい人」という意味を持つ「大人」という字が選ばれ、読みはそのまま「おとな」となりました。 このように、意味を重視して漢字を選び、読みは日本語のまま残したものが熟字訓です。
当て字とは?
当て字とは、漢字の意味や音を借りて表記した言葉のことです。 熟字訓と似ていますが、当て字には大きく分けて次の2種類があります。
- 意味を借りた当て字(例:寿司、煙草)
- 音を借りた当て字(例:珈琲、合羽)
当て字は、漢字本来の読みや意味とは一致しないことが多く、表記としての「見た目」や「雰囲気」を重視して使われることもあります。
よく使われる当て字の例
- 寿司(すし)
- 珈琲(コーヒー)
- 煙草(たばこ)
- 合羽(かっぱ)
- 海月(くらげ)
「寿司」や「珈琲」などは、漢字の読みからは想像できませんが、今では一般的な表記として定着しています。
熟字訓と当て字の違い
熟字訓と当て字は似ていますが、次のような違いがあります。
- 熟字訓:日本語の読みをそのまま漢字にあてたもの
- 当て字:漢字の意味や音を借りて表記したもの
熟字訓は「読みが日本語由来」、当て字は「漢字の意味や音を借りる」という違いがあります。 どちらも日本語の歴史の中で自然に生まれ、長い時間をかけて定着してきました。
まとめ
熟字訓と当て字は、漢字の読み方の中でも特に日本語らしさが表れる部分です。 日本語の言葉を大切にしながら、漢字をうまく取り入れてきた昔の人たちの工夫が感じられます。 読み方の仕組みを知ると、ふだん何気なく使っている言葉にも新しい発見が生まれると思います。